ドイツ・ケルン(Köln)在住の日本人夫婦が、2023年12月のクリスマスマーケットシーズンにドイツのモンシャウ(Monschau)を観光した旅の記録です。
はじめに
モンシャウはドイツ西部、ベルギーとの国境付近のアイフェル地方に属します。山間にこじんまりと佇む小さなその町には美しい木組みの家が連なり「アイフェルの真珠(die Perle der Eifel)」とも呼ばれています。
モンシャウという素敵な町の存在は、ドイツ生活の長い夫の同僚から教えてもらいました。ヨーロッパの知る人ぞ知る観光地で、いまだに日本の旅行ガイドブックにも大きくは取り上げられていません。夫の同僚に熱烈におすすめされたのと、ケルンからわりと近かったことから一度は行ってみたいと思っていました。
モンシャウは春から秋にかけての観光がおすすめとされていますが、一方で冬のクリスマスマーケットがとても有名です。
今回は、まさにクリスマスマーケットシーズンのピークである12月3週目の週末に1泊で行ってきました。一番人気がある時期のため、11月にホテルを予約しようとした時には高額なところしか空いてなく焦りましたが、キャンセルが出るのを待ってなんとか予算内(朝食付き2人で€165)で行ってこれました。
夫の同僚から教えてもらった名産物であるマスタード(Senf)も試食してきたので、街並みやクリスマスマーケットの様子と合わせてモンシャウの魅力をご紹介します。
交通手段
モンシャウはあまりアクセスの良い町ではなく、自家用車がなければアーヘン(Aachen)からバスで30分程度かけて行く他ないようです。途中国境を越えてベルギーを通過するルートとなっています。
バス乗り場はアーヘン中央駅(Aachen Hbf)の1つ手前のローテエアデ駅(Bahnhof Rothe Erde)にあります。ケルン中央駅からローテエアデ駅までは長距離列車REを利用し片道50分程度かかりました。
ローテエアデ駅からは様々な方面行きのバスが出ていますが、モンシャウへ行くには『SB66』というバスに乗る必要があります。このバスは1時間に1本しか出ていないため、あらかじめ時間を調べておきそれに合わせたREに乗るのがおすすめです(ただREの到着が遅れるリスクがあるので時間に余裕を持たせておく必要があります、、)。
私たちの場合は外でバスを15分程度待ちましたが、真冬のためとても寒く、また最悪なことにバス停前のパン屋のコーヒーが品切れだったため、暖を取る方法がありませんでした、、。
バス停にはすでにたくさんの人が待っていましたが、全員がモンシャウ行きというわけではないようでした。しかしモンシャウ行きのバスが到着した時点ですでに車内はほぼ満員状態で、なんとか乗り込めましたが超激混みな車内は東京の通勤電車のようでした。バスはいつも通り揺れましたがつかまるところもなく、また夫とも離れてしまいかなり辛い30分間になりました。
終点のモンシャウ旧市街駅(Monschau, Altstadt)で下車し、ケルン中央駅からのトータルの移動時間は2時間弱でした。帰りもちょうど逆のルートで帰り、同じ時間かかりました。
今回は往路・復路ともにREとバスを利用したので、月額€49の乗り放題パス「Deutschland ticket」が利用でき、実質無料でした。
車であればデュッセルドルフやケルンから1時間半程度で来れてしまうので、電車・バスの乗り継ぎと比べずっと楽ですし、日帰りも十分可能です。ただし、たとえホテルに宿泊する場合でも駐車料金をとられるのが一般的なようです。実際に空いているスペースに無断駐車をして駐禁切符を切られた知り合いもいたので、日帰りの場合も含めて注意が必要です。
観光スポット巡り
それではこれから今回実際に訪れた観光スポットや見どころなどをご紹介していきます!
モンシャウの街並み
バスを降りてホテルに荷物を置いた後は、モンシャウ旧市街駅から道なり(Laufenstr.)に沿ってモンシャウ旧市街の散策を開始しました。
さっそく可愛らしい色合いの同じようなデザインの家々が見えてきました。頭上にはイルミネーション用の電球が吊ってありましたが、昼間なのでまだ点灯されていませんでした。
左手に空き地があったので覗いてみると、奥にも家々がずらり。なんと、家が歪んでいます!というより、まるで家の構造が歪んで見えるようなデザインが施されているようです。
進んだ先の右手にも、屋根が大きく歪んだ家を発見!これはさすがに実際に歪んでいるようでした。わざとそのようなデザインにしたのか、ダメージでそうなってしまったかは不明です。
「建物は地面に対して垂直に建っている」「屋根は地面に対して水平になっている」という思い込みがあるせいか、歪んだ建物を見ると脳が過敏に反応してとても不思議な心地になりました。
町の家々の多くが同じ銀色の屋根にクリーム色や水色、薄いピンク色などの淡い色合いの壁でできており、壁上のライン模様も相まってメルヘンチックな世界に入り込んだようでした。
モンシャウの専門店
さらに先へ進むと、だんだんとお店が見えてきました。
「Mon-unique」というギフトショップでは、陶器やガラス製品を中心に置物や食器類、アクセサリーなどが販売されていました。お店の名前どおり1つ1つユニークなデザインで、全てモンシャウで手作りされているようです。値段はお手頃なものは少ないですが、ここでしか手に入らないものなので、日本へのお土産としてもおすすめです。
緑の看板の「Geduldspiele」=『忍耐ゲーム』という名前のお店は、いわゆる知能系ゲームの専門店でした。知恵の輪やルービックキューブなど日本でもお馴染みなものに加え、「4つの犬のピースを角度を試行して枠内にうまくはめ込む」といったものなど、初めて見るゲームもたくさんありました。
ルールがわからないゲームは、お店のスタッフさんに聞いたら英語で親切に教えてくれました。ルール自体は簡単なものばかりで、またスマホゲームにはないアナログならではの魅力的なゲームが本当にたくさんあり、狭い店内は人でごった返していました。値段も良心的だったため、私たちも日本の家族へのお土産としていくつか購入しました。
他にも様々な専門店やギフトショップがありました。目についたお店は観光客用のお店ばかりで、やはりモンシャウという町は観光地として発展してきたことがわかりました。
ざっと見渡した限りではスーパーやドラッグストアなどは見当たらず、他地域へのアクセスもあまり良くない町なので、住民の方々が普段どのように生活しているのかは気になりました。
赤の家博物館
Laufenstr.のほぼ終着点の広場にある立派な赤い建物は、ドイツ語で『赤の家』と呼ばれる博物館(Museum Rotes Haus Monschau)です。
18世紀にロココ様式で建造された織物商人の邸宅で、中世の上流階級の生活や文化を知れる歴史的な建物となっています。4月から11月にかけて€5で内部の見学ができるようです。
今回は閉館しており中に入ることはできませんでしたが、各部屋は電気がついており、その前の大きなクリスマスツリーと合わせて映える撮影スポットとなっていました。
マルクト広場・橋
次に訪れたのは、クリスマスマーケットのメイン会場であるマルクト広場(Markt)です。
モンシャウの旧市街は全体的にクリスマス仕様となっており、通りのところどころに出店が出ていましたが、多くの出店はマルクト広場に集中していました。
広場には子ども向けのポータブルのメリーゴーランドなども設置されていてとても賑わっていました。
クリスマスマーケットで売られていたものは、後述のマスタードを除いておおむね他の地域と変わりなく、定番のホットワインなどを嗜みました。
また、マルクト広場の脇の橋上からの家々とルール川(Ruhr)の景色は絶好の撮影スポットで、「モンシャウで最も美しい景色」と言われているそうです(写真は翌日朝に再度訪れた際に撮ったものです)。
ここでもはっきりと家の歪みが確認できましたが、特に一番手前の家が川側に大きく傾いているのがわかると思います。多くの家が土台から川側にはみ出していたので、倒れたり崩れたりしないのかな、と少し心配になってしまいました。
この撮影スポットも春や夏であれば花々が咲いているのでもっと美しい写真が撮れるようです。
【モンシャウの名産品】マスタード
モンシャウの名産物として、マスタード(Senf)が知られています。今回は立ち寄りませんでしたが、「Senfonie」という常設のマスタード専門店があるくらいです。
クリスマスマーケットでもマスタード専門店がいくつか出ていました。普通のマスタードだけでなく、はちみつやガーリック、カレー、オレンジなど色々あり、はちみつ瓶のような可愛らしい容器に入っていました。気になった味は試食ができましたが、全体的に甘い印象で、おでんにつけて食べるものではないと感じました。マスタードを使った料理のレシピ本なども合わせて販売されていました。
レストランや出店でもマスタードを使ったメニューが出ていました。あえてトッピングにマスタードが付くホットドッグを注文してみましたが、出てきたマスタードがレトルトだったのは残念でした(笑)
また、こちらも今回は立ち寄りませんでしたが、モンシャウ旧市街から少し離れたところに「Senfmühle Monschau」=『マスタード工場』という名前の施設があります。製造過程の見学やマスタードの試食に加え、お酒やチョコレートなどマスタード以外のお土産の購入も可能なようです。
ハラー遺跡・展望台
2日目は朝から散策を開始し、前日と同じルートを辿ったあと、町全体を眺望するために山の上の展望台(Aussichtspunkt Monschau)に向かいました。
展望台はハラー遺跡(Haller-Ruine)のすぐ近くにあります。写真の中心から少し右上にある城壁のようなものがハラー遺跡です。
ハラー遺跡は夜になるとライトアップされていて、マルクト広場のクリスマスマーケット会場から暗闇に浮かび上がるように見えていたので気になっていました。
この写真を撮影したのは「モンシャウ福音教会橋(Brücke der Evangelischen Stadtkirche Monschau)」と呼ばれる有名な撮影スポットで、「赤の家」の裏側にあたります。そこからたったの10分程度でハラー遺跡まで登ることができました。傾斜もそこまできつくなく、朝の良い運動になりました。
上からはモンシャウの街並みが一望できました。山間の谷間を、中心を流れるルール川を取り囲むように家々が並んでいる様子がよくわかりました。
また、ここからでも川の流れる音が想像以上によく聞こえました。特に「赤の家」の裏側のルール川(Ruhr)にラウフェン川(Laufen)が合流する地点の水音は大きく、そこの近くのホテルをとった知り合いがうるさくて眠れなかったと言っていたことも理解できました。
右手側には、同じ目線あたりにモンシャウ城(Burg Monschau)が見えました。山の斜面に沿って家々が立ち並んでいる様子もよくわかりました。
モンシャウは山に囲まれているため、他にも展望台が2カ所もあるようです。全て徒歩圏内で、20〜30分あれば十分に制覇できると思われます。
おわりに
モンシャウの家々はどれも可愛らしいメルヘンチックなデザインで、とても癒されました。その間を流れる流れの速い川も魅力的でした(下の写真は有名な撮影スポットの「Laufenbachbrücke」 =『走るように流れる小川の橋』)。
ただ、訪れたのが冬で木々の葉が全て落ちていたためか、展望台からの町の眺めはとても寂しく、切なく感じました。また、ケルンの大規模なクリスマスマーケットを見慣れているためか、正直モンシャウのクリスマスマーケットは期待していたほどインパクトのあるものではありませんでした。
しかしながら、毎年のようにモンシャウのクリスマスマーケットに訪れる知り合いもいるので、分かる人には分かる素晴らしい魅力があるのだと思います。次は春や夏などお花が咲いている季節に是非また行ってみたいと思っています。
ヨーロッパに住んでいて少しでも興味がある方であれば、訪れてみても良いのではないでしょうか。
今回のこの記録が、今後の皆さんの旅の参考になれば幸いです。
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