ドイツ・ケルン(Köln)在住の日本人夫婦が、2024年現在のドイツでの給料(額面・手取り)やワークライフバランスを公開します。
はじめに
以前にドイツ生活における年間支出額を【海外生活記】ドイツ生活費 2023 で公開しましたが、2023年の支出額は €57,600(約864万円)、月換算で€4,800(約72万円)でした(円建て金額は¥150/€で換算しています)。
そもそも日本とドイツでは平均年収や税率、働き方が異なるので、ドイツでの生活の難易度や豊かさ度合いについて、いまいちピンとこない方もいたのではないかと思います。
そこで、今回はドイツでの労働収入、つまり給料を公開したいと思います。また、給料から源泉徴収される所得税や社会保険料も開示しますので、手取り割合の目安として参考にしていただければ幸いです。
合わせて、実際に私たちが働いている会社・組織の働き方やワークライフバランスなどについても詳しくご紹介していきたいと思います。生活費との対比や日本のワークライフバランスとの対比で楽しんでみていただければ幸いです。
(※)可能な限り正確な情報をご提供するよう努めておりますが、運営者の個人情報保護の観点から、一部の数字や表現に脚色を加えている場合がある点は何卒ご了承ください。
*** ドイツでの生活費の目安を知りたい方は、次の記事をぜひご参照ください ***
前提
今回ドイツでの給料や手取りを公開するにあたり、はじめに運営者の属性や職種、勤務先の業績賞与や各種手当などの前提をここに記載します。
属性や職種
一般的に年収に大きく影響すると考えられる、年齢や勤務先、職種などの概要データをここに記載します。詳細な職務内容や残業時間などについてはワークライフバランスの章をご確認ください。
属性
夫婦ともに修士卒の30代前半です。(経歴の概要は運営者情報にてご確認ください。)
勤務先・職種
夫は国際機関の専門職の正規職員です。
妻は日系中小企業のドイツ支社で現地採用された間接部門の正社員です。ドイツでは2社目で、以前は日系大企業ドイツ支社の店舗スタッフとして働いていました。
勤続年数
どの会社・組織も勤続3年以内です。
勤務時間
夫婦ともにフルタイム(8時間×週5日)勤務です。
業績賞与や各種手当
基本給の他に給与に加算される業績賞与や各種手当に関して概要をここで記載します。有給休暇の日数など、その他福利厚生についてはワークライフバランスの章をご確認ください。
賞与
夫婦ともに現職での夏季・冬季賞与はありません。妻の前職では前月の売上に応じて業績賞与が発生する場合がありました。(ボーナスの有無は会社や組織によって異なり、ドイツでは一般的に夏や冬のボーナスはないということではありません。)
交通費手当
夫の場合交通費は自己負担です。ケルンからボンまで通うため通常の定期券は月€250程度かかりますが、勤務先が大きな組織のため割安の月€70程度で購入することができます。現在はドイツ全土の普通電車・バスが乗り放題のパス「Deutschland Ticket」 が販売されているので、より安価な月€49のみの負担となっています。
妻については現職では交通費が全額支給されていますが、前職では全く支給されませんでした。職場がケルン市内だったため、Deutschland Ticket の発売状況によって€9で済んだ月もあれば(以前はDeutschland Ticketが€9の月もあったのです!)、通常価格の€67で購入していた月もありました。(ドイツでは交通費が支給されないことは一般的ですが、日系企業であれば支給される場合も少なくない印象です。)
家賃・扶養手当
夫は一定の家賃手当と扶養手当を受け取っています。妻の年収が国際機関の定める基準値に満たないため、扶養家族としてカウントされています。
その他手当
夫の給料には毎月勤務地の物価状況に応じて地域調整給がつきます。また、海外出張がある月には出張手当などがつきますが、こちらは臨時的収入のため今回は省略します。
公開する収入データ
上記のことから、私たち夫婦の場合は月給×12ヶ月が概ね年収に一致するため、今回はある月の月給を公開したいと思います。
また、2024年現在の月給に加え、【海外生活記】ドイツ生活費 2023 との比較が可能なよう、ちょうど1年前の2023年時点の月給も合わせて公開します。
結論として、今回は次の4つのデータを公開します。
- 1. 妻の2023年5月(前職1年目)の月給
- 2. 妻の2024年5月(現職1年目)の月給
- 3-1. 夫の2023年5月(現職2年目)の月給
- 3-2. 夫の2024年5月(現職3年目)の月給
なお円建ての金額について、【海外生活記】ドイツ生活費 2023 では¥150/€で換算しており、整合性をとるために収入も同じレートで換算するのが適切と考えます。一方で、為替レートは2024年に入ってからも大きく変動し、2023年に比べてより円安方向に移行したため、今回は¥150〜170/€と幅をもたせて表示することとします。
また、夫の給料明細はドル建てで記載されていますが、給与振込時のレートでユーロ建てに換算して表示します。
【実績値公開】ドイツでの月給・年収
それでは実績値の発表ですが、私たちがドイツでサラリーマンとして勤務して実際に受け取った月給(額面・手取り)は次のとおりです。
ドイツでの月給(2023〜2024年)
# | 収入データ | 額面 | 額面(円換算) | 手取り | 手取り(円換算) | 手取り割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 妻:2023年5月(前職1年目) | €2,374 | ¥356,100〜403,580 | €1,682 | ¥252,300〜285,940 | 70.9% |
2 | 妻:2024年5月(現職1年目) | €3,113 | ¥466,950〜529,210 | €2,110 | ¥316,500〜358,700 | 67.8% |
3-1 | 夫:2023年5月(現職2年目) | €7,068 | ¥1,060,200〜1,201,560 | €5,246 | ¥786,900〜891,820 | 74.2% |
3-2 | 夫:2024年5月(現職3年目) | €7,401 | ¥1,110,150〜1,258,170 | €5,456 | ¥818,400〜927,520 | 73.7% |
これに単純に12をかけて年収ベースに換算したのが次の表です。
ドイツでの年収(2023〜2024年)
# | 収入データ | 額面 | 額面(円換算) | 手取り | 手取り(円換算) | 手取り割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 妻:2023年(前職1年目) | €28,488 | ¥4,273,200〜4,842,960 | €20,184 | ¥3,027,600〜3,431,280 | 70.9% |
2 | 妻:2024年(現職1年目) | €37,356 | ¥5,603,400〜6,350,520 | €25,320 | ¥3,798,000〜4,304,400 | 67.8% |
3-1 | 夫:2023年(現職2年目) | €84,816 | ¥12,722,40〜14,418,720 | €62,952 | ¥9,442,800〜10,701,840 | 74.2% |
3-2 | 夫:2024年(現職3年目) | €88,812 | ¥13,321,800〜15,098,040 | €65,472 | ¥9,820,800〜11,130,240 | 73.7% |
円建ての金額について、換算レートの幅を20円分(¥150〜170/€)も取っているので、レートによって大きく年収に開きが出てしまっています。現在は記録的な円安水準のため、日本の平均年収に比べたらかなり高く見えますが、もし今後数年前までの一般的な水準(¥130/€程度)に戻れば、円換算額は大きく目減りすることになります。
ドイツでのスキルレベル別推定年収
ざっとみてわかる通り、私たち夫婦間には大きな収入の開きがあるので、もし自分がドイツで働いた場合にどの程度稼げるのかが判断しにくいかもしれません。
そのような場合は、あくまでも私たちが実際に見聞きした求人情報に基づく推定年収になりますが、下記のスキルレベルに当てはめて、上記の収入データ(1、2、3)と照らしてみてください。ピタリとあてはまるものがない場合は、下記の情報を参考にして自分で推定してみてください。(ドイツ法人については実際の求人情報を確認できていないため不明です。)
ドイツでのスキルレベル別推定年収
# | スキルレベル(語学力、専門性、職責など) | 勤務先・職種の例 | 給与水準 |
---|---|---|---|
A | 日本語以外の語学力が初級〜中級レベルで、オフィス勤務経験に乏しい(大学生のアルバイトスタッフなども併存する勤務先・業務内容レベル) | 日系の飲食店・小売店舗のスタッフ | 1に近い水準、あるいは1を下回る水準 |
B | オフィス勤務経験があり、英語やPCが問題なく使える | 日系企業の間接部門スタッフ・営業アシスタント | 2に近い水準 |
C | ドイツ語や英語が問題なく使え、一定の業界知識や業務経験、コミュニケーション力を兼ね備えている | 日系企業の間接部門スペシャリスト・営業担当者 | 2と3の平均値程度 |
D | 高度な語学力と特定分野の深い専門性を兼ね備え、長期間の海外出張やストレスのかかる環境にも耐えうる | 国際機関/コンサルティング会社 | 3に近い水準、経験・業績次第ではそれ以上 |
E | ドイツ語および英語が堪能で、その業界や職種の経験が豊富にあり、高度なマネジメント力とリーダーシップ、ストレス耐性を兼ね備えている | 日系企業の部門・支社責任者 | 3に近い水準、あるいは3を大きく上回る水準 |
【実績値公開】ドイツでの月給の内訳
以降、3つの勤務先別に、月給の内訳や天引きされている税金や社会保険料の内訳について解説していきます。
某在独日系大企業・販売員
妻の前職1年目の給与明細は次のとおりです。緑色の数値は月給に対する比率を表しています。
2023年5月 給与明細
月給:€2,374
基本給:€2,200
業績賞与:€174
税金:€201・・・8.5%
所得税(Lohnsteuer):€201・・・8.5%
社会保険料:€491・・・20.7%
健康保険料(KV-Beitrag):€195・・・8.2%
老齢年金保険料(RV-Beitrag):€221・・・9.3%
雇用保険料(AV-Beitrag):€31・・・1.3%
介護保険料(PV-Beitrag):€44・・・1.9%
手取り:€1,682・・・70.9%
基本給について、現在のドイツの最低賃金が時給€12のため、最低賃金の場合フルタイム勤務の月給は€2,100程度になります。妻の場合は試用期間(ドイツでは通常6ヶ月)後にワンランク昇格したため、当時の基本給は€2,200となっています。
業績賞与について、試用期間後、前月分の店舗売上が目標金額を超えた分に応じて基本給の数%の賞与がもらえていました。年に半分ほどは目標金額を超えることができず、その場合は賞与はありませんでした。
税金について、日本と同様にサラリーマンは所得税を源泉徴収されます。一方で、日本の住民税にあたる税金はドイツにはありません。また、所得税については日本と同様に累進課税制度が採用されており、年毎に設定される非課税枠(2023年は単身者€10,908、夫婦世帯合計所得€21,816)を超えると、稼げば稼ぐほど徴収される所得税の比率が高くなります。
なお、旧東ドイツの地域では、一部の高所得者に限られますが、最大で所得税額の5.5%の連帯税(Solidaritätszuschlag)が別途課されるようです。
社会保険料について、日本と同様に健康保険料、老齢年金保険料、雇用保険料、介護保険料が源泉徴収されますが、月給に対する比率は日本よりもかなり高くなっています。また、雇用する会社側も同額の社会保険料を負担しているようなので、1人の社員を雇用する会社側の金銭的負担はかなり大きいことがわかります。
手取りについて、月給€2,374というのは最低賃金+α程度の給料ですが、月給に対する手取りの割合は70.9%となっており、なんと30%近くも税金や社会保険料に持っていかれています。ドイツは税金や社会保険料が高い国として知られており、その分社会保障が充実しているとも言われますが、物価が上がり続けている今、ドイツで働き始める予定の方は手取りの割合を見誤らないよう注意が必要です。
また、現在の最低賃金€12は日本よりも高いですが、ドイツの物価はざっと日本の倍程度なので、今流行っているオーストラリアへの出稼ぎのようにたくさん稼いでたくさん貯蓄することは難しいと思われます。
実際にこの手取りを受け取っていた身としては、この金額では一人暮らしをしてかつ長期休暇に海外旅行を楽しむことは少し難しいという印象です。実際に同僚の中には、シェアハウスで暮らしている人や、副業をしている人、結婚していてパートタイム勤務の人、実家暮らしの大学生などもいました。
某在独日系中小企業・間接部門
妻の現職1年目の給与明細は次のとおりです。緑色の数値は月給に対する比率を表しています。
2024年5月 給与明細
月給:€3,113
基本給:€3,000
時間外手当:€113
交通費手当:省略
税金:€340・・・10.9%
所得税(Lohnsteuer):€340・・・10.9%
社会保険料:€663・・・21.3%
健康保険料(KV-Beitrag):€261・・・8.4%
老齢年金保険料(RV-Beitrag):€290・・・9.3%
雇用保険料(AV-Beitrag):€40・・・1.3%
介護保険料(PV-Beitrag):€72・・・2.3%
手取り:€2,110・・・67.8%
基本給について、6ヶ月の試用期間を経て、一度昇給した金額になります。妻の会社の場合、仕事ぶりに対する評価にかかわらず、年齢や勤続年数に応じて基本給がある程度決まってくる印象です。
時間外手当について、タイムカードで勤務時間が管理されており、前月に6時間半残業した分の手当がついています。
交通費について、実費支給かつ非課税のため今回は省略します。
税金について、上記1(2023年5月)の時と比較して月給が31.1%上がっていますが、源泉徴収される所得税の比率は約2.4%上がっています。当然もっと年収が高ければさらに所得税率は上がります(現在の限界税率は45%となっています)。
ちなみに、物価の上昇を受けて2024年の非課税枠は単身者€11,604、夫婦世帯合計所得€23,208に引き上げられました。
社会保険料について、上記1の時と比較して月給が31.1%上がっているのに対し、0.6%ほどしか上昇していません。月給が高いほど高い金額を納めることには違いありませんが、月給に対する比率は大きくは変化しないことが推定されます。
手取りについて、上記1の時と比較して所得税率が上がったことが大きく影響し、月給に対する手取りの割合は67.8%と大きく目減りしています。これは、例えば時給が€15の場合に、1時間追加で残業しても手取りは3分の2の€10、あるいはそれを下回る金額しか増えないことを意味しています。
なお、ドイツでは外国からの収入なども所得として報告する義務があります。例えば、ドイツ在住でも日本から副業のアフィリエイト収入などがある場合には、副業で稼いだ額の3分の1あるいはそれ以上の割合が税金として徴収されることになります。
最後に、現在の手取り額に対する満足度としては、それなりに高いです。ワークライフバランスの章で後述しますが、仕事内容や責任の重さに対しては日本の場合よりも高い給料をもらっているという印象です。この手取り額であれば、たくさん貯金することは難しいものの、一人暮らしして年に数回旅行することは可能です。
某在独国際機関・専門職
夫の現職2・3年目の給与明細は次のとおりです。緑色の数値は月給に対する比率を表しています。
2023年5月 給与明細
月給:€7,068
基本給:€4,853
地域調整給:€1,487
家賃・扶養手当:€727
源泉徴収額:€1,822・・・25.8%
組織運営費など:€905・・・12.8%
健康保険料:€196・・・2.8%
年金保険料:€721・・・10.2%
手取り:€5,246・・・74.2%
2024年5月 給与明細
月給:€7,401
基本給:€5,042
地域調整給:€1,723
家賃・扶養手当:€636
源泉徴収額:€1,945・・・26.3%
組織運営費など:€948・・・12.8%
健康保険料:€210・・・2.8%
年金保険料:€788・・・10.6%
手取り:€5,456・・・73.7%
基本給について、組織における職種や職責、勤続年数などに応じて決まります。
地域調整給について、勤務国や勤務地域の物価に応じて、ある程度一定の割合に設定されています。ニューヨークやスイス、東京(青山周辺)が高く、ドイツ・ボンはベルリンよりも低く設定されています。毎月の物価変動の状況も加味しているようですが、実際には月毎の月給の差はほとんどありません。
家賃・扶養手当について、家賃手当は最初はある程度高く、職責(ランクアップ)や勤続年数などに応じて徐々に減額されます。
源泉徴収額について、国際組織に関しては居住国(夫の場合はドイツ)に対する税金および社会保険料の支払いは免除されています(当然ながら将来ドイツから年金を受け取ることはできません)。一方で、税金に匹敵する割合の組織運営費などが源泉徴収されています。また、国際機関が運営する基金に健康保険料や年金保険料を納める必要があります。
手取りについて、ドイツの一般企業に勤める場合に比較すると月給に対する手取りの割合はかなり高く見えます。日本の場合と比較しても手取り割合は多少高くなっていると思われます。
手取り額に対する満足度はそれなりに高いです。日本の元勤務先でそのまま働き続けていた場合の推定年収とあまり変わらないですが、手取り額ベースでは多少上回る可能性があります。また、ワークライフバランスの章でも後述しますが、残業時間の少なさや有給の取りやすさなどを考慮すると、現職の方が時間あたり単価は圧倒的に高いです。
ドイツにおけるワークライフバランス
本章では、3つの勤務先の職務内容を簡単に紹介するとともに、残業時間の多さや有給休暇の取りやすさなどワークライフバランスについて解説していきます。
某在独日系大企業・販売員
職務内容
・小売店舗での接客・レジ・品出しなど
・昇格後は本社への日次報告、スタッフの勤務管理なども追加
働き方(出社時間や残業時間)
シフト制で、朝番であれば9−17時、遅番であれば12−21時でした(昼食休憩1時間を含みます)。週ごとに朝晩と遅番が交代します。8時間近く立って過ごすのでそれなりの体力が必要でした。ドイツの法令に基づき日曜日は必ず休みでしたが、土曜日は多くが出勤日で、かわりに平日のある曜日が休みでした。タイムカードで勤務時間が管理されており、規定の勤務時間を超えた場合は別日の勤務時間を減らしたり追加の有給休暇を取得したりできました。
有給休暇:年25日程度
一般的なドイツの有給休暇は年25〜30日程度のため、日数としては若干少ない印象です。業務に支障がない範囲で、ある程度自分の好きなタイミングで最大3週間連続の有給休暇が取得可能でした。全員がほぼ100%消化していました。また、ドイツの法律に基づき、年次有給休暇とは別に一定回数まで病欠(有給)の取得が可能でした。
ワークライフバランス
接客業のため直接クレームを言われることもありそれなりに疲れましたが、勤務時間以外は仕事のことを全く考える必要がなかった点は良かったです。ただし、英語やドイツ語の勉強はある程度必要です。生活リズムや休日が夫と合わないことが一番の難点でした。
某在独日系中小企業・間接部門
職務内容
・オフィス事務・経理・営業アシスタント
働き方(出社時間や残業時間)
勤務時間は9−18時ですが(昼食休憩1時間を含みます)、タイムカードで管理されているので、早く出勤したり昼食休憩を短くすれば早く帰宅することが可能です。残業時間は時間外手当としてお金で受け取ることも、翌月に有給休暇として消化することも可能です。
有給休暇:年30日程度
業務に支障がない範囲で、ある程度自分の好きなタイミングで最大3週間連続の有給休暇が取得可能です。全員がほぼ100%消化していますが、お金で受け取ることも可能です。また、ドイツの法律に基づき、年次有給休暇とは別に一定回数まで病欠(有給)の取得が可能です。
ワークライフバランス
顧客と直接関わる機会が少なく、業務もある程度自分のペースで進めることができるため、大きなプレッシャーはありません。当然言語の勉強はある程度必要ですが、週末に自分の好きなことをする時間も確保できます。一方で、自宅から勤務先までが遠く、毎日往復3時間かかる点が一番の難点です。
某在独国際機関・専門職
職務内容
・専門分野に関する調査・分析業務
・国際交渉業務
働き方(出社時間や残業時間)
基本的な勤務時間は9−18時ですが(昼食休憩1時間を含みます)、裁量労働制のため時間外手当はつきません。17時に上がれる日もあれば、19時程度までかかる時があったり、週末に持ち越すこともあります。オフィス出勤は基本的に週2日で、他の日はホームオフィスが許可されています。年に数回ほど、国際会議のために朝早くから深夜近くまで出勤したり、数週間海外出張に行ったりすることがあります。
有給休暇:年25日程度
業務に支障がない範囲で、最大1ヶ月程度の有給休暇が取得可能です。また、有給休暇とは別に一定回数まで病欠(有給)の取得が可能です。
ワークライフバランス
有給休暇はある程度自由に長期間取得することが可能で、例えば1ヶ月程度日本に一時帰国することも時期を選べば全く問題ありません。普段からリモートワークが許可されているので、上司から許可を得られれば日本からリモートで数日間出勤することも可能です。一方で、週末も記事や論文を読むなど、仕事関連の勉強が常に必要です。また、【海外生活記】ドイツ生活費 2023 にも記載した通り、仕事の性質上英語やフランス語の継続的な勉強が必須で、レッスン費用もそれなりにかかっています。
[補足]ドイツでの確定申告について
語弊があることを覚悟の上で言えば、ドイツでは税金の取り逃がしを防ぐために、サラリーマンから毎月最大限の所得税を源泉徴収しています。
日本のように年末調整の仕組みも存在しますが、微調整程度であり、そこで払い過ぎた所得税が大きく戻ってくるということはありません。
ある程度の所得税が還付される見込みがあり、かつ時間ややる気がある方には、任意の納税申告(日本でいう確定申告)をすることをおすすめします(事前に設定している税金クラスによっては納税申告が義務になる場合もあります)。
所得税が還付される可能性が高いケースとしては、一般的に次のケースが考えられます。なお、ドイツの税務の専門家ではないため、全てのケースを網羅できていないと思われます。正確な情報はご自身にてご確認ください。
- 通勤交通費を自腹で支払った場合
- 多額の医療費を支払った場合
- 年の途中で転職して給与額が変わった場合、あるいは無給の期間があった場合
- 税金クラス(Steuerklasse)が夫婦ともにデフォルトの ‘4’ であるが、夫婦間で年収に大きく差があった場合
- 年の途中で子どもが増えたり、結婚したりした場合 など
夫婦間で年収に大きく差がある場合には、毎年の納税申告が義務になってしまいますが、税金クラスを夫婦で ‘3’ と ‘5’ の組み合わせに変更することが毎月の手取りを増やす有効な手段と言われています(最終的に納めるべき税金の総額は、税金クラスを夫婦ともに ‘4’ に設定していて任意で納税申告する場合と同じです)。
[補足]ドイツの老齢年金について
日本と同様に、ドイツでもサラリーマンは老齢年金保険料を源泉徴収されます。
日本とドイツでは老齢年金にかかる協定を締結しており、ドイツで5年以上年金保険料を納めていれば、仮に日本に帰国していたとしても日本で年金を受給することが可能です。任意で同時に日本にも年金保険料を納めることが可能で、逆に日本に帰国後も継続してドイツに年金保険料を納めることも可能なようです。
現在のドイツでの年金受給開始年齢は65歳7ヶ月となっており、年金額の目安としては、45年間(例えば20歳〜64歳)働いた場合に現役時代の給料の平均額の45%程度と言われています。
なお、ドイツでは日本と異なり、専業主婦(夫)には自分名義の年金はないことには注意が必要です。夫婦合計で年金保険料を納めていた夫(妻)の年金のみが支給され、もし先に夫(妻)が亡くなってしまった場合には、残された専業主婦(夫)には夫(妻)の年金の55%相当の未亡人年金が支給されることになっています。
ドイツでも少子高齢化は進んでおり、年金制度については今後も改定されることが想定されるため、ご自身で常に最新の情報を取得するようご注意ください。
おわりに
今回の記事を作成するにあたり、自分たちの給料の内訳を詳しく確認することになりましたが、改めてドイツの所得税と社会保険料の高さに驚かされました。
あまりにも所得税や社会保険料が高いと、「副業をしたりスキルアップをしたりして今より少しでも年収を上げよう!」という意欲もそがれてしまうというのが正直なところです。
このことが、ドイツ人が年収よりもワークライフバランスを重視していることに影響しているようにも思えます。
私たち夫婦も日本で働いていた時はとにかく仕事に追われ、平日に自分の好きな時間に帰宅したり、長期の有給休暇を取得したりすることは自然と諦めていましたが、ドイツに移住してからはドイツの文化のおかげでワークライフバランスが信じられないくらい改善されました。
今は、収入が人より多いか少ないかということよりも、自分の好きな仕事が楽しくできるかや、休暇に自分たちのやりたいことが思う存分できるかが何よりも大切だと考えています。
本記事にはドイツ移住をおすすめする意図はありませんが、ドイツ移住を計画している方やドイツに住まわれている方などの参考になれば幸いです。
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