ドイツ・ケルン(Köln)在住の日本人夫婦が、ドイツ生活において活用している銀行・投資口座とそれらのおすすめの活用術をご紹介します。
※2024年6月29日にN26/Wise/ソニー銀行の口座開設の友人紹介キャンペーンなどに関する内容を修正・追記しました。
はじめに
ドイツで生活する場合にも、当然ながら自分名義の銀行口座は必須です。家賃やスマホ料金などの支払いは日本と同様に原則 ‘口座振込’ あるいは ‘口座振替(引き落とし)’ で求められます。特に現地で就職する際には、給与を受け取るための口座情報を会社に提出する必要があります。
本記事では、ドイツの国際機関に転職した夫に帯同した私(妻)が、現地で就職するため銀行口座を開設するにあたり、複数の銀行をリサーチして得られた情報を中心に共有します。したがって、本記事も妻である私によって作成されました。
ドイツにも ‘Deutsche Bank’(ドイツ銀行)や ‘Postbank’(郵貯銀行)をはじめ、数多くの公営および民間の銀行があります。銀行を選ぶ上では、企業としての安定性やATMの多さ、その他サービスの質など様々な基準があるかと思いますが、その中でも今回は “資産形成に有利か“ という観点からおすすめな銀行(株式投資ができる銀行も含まれます)をご紹介したいと思います。また、資産形成の観点からそれらの銀行を効率良く使い分ける活用術も含めてお届けします。
なお、本記事のコンテンツは、基本的にドイツあるいはヨーロッパに転居する予定がある方向けに作成しています。銀行によっては口座の開設において現地の滞在許可証や現地の住所が必要となりますので、その点はご了承ください。また、中には日本在住でも開設できる、海外に頻繁に行かれる方におすすめな銀行もある一方、海外転居前に日本でしか口座開設できない銀行もありますので、その点も合わせてお伝えしていきます。
おすすめの銀行口座3選とその理由
結論から言うと、資産運用の観点から口座保有をおすすめしたいのは次の3行です。理想としてはドイツ生活においてこの3つの口座全てを保有するのが望ましいです。3行とも物理的な店舗を持たないネット銀行になります。
- N26
- Wise
- ソニー銀行(非居住者向け)
まずは上記の3行をおすすめする理由を、ドイツでメジャーな他の銀行と比較しながら解説していきます。
ドイツにおける主要な銀行は次の4行です。
- Deutsche Bank ・・・ドイツ最大手のメガバンク
(ヨーロッパの中央銀行は ‘ECB’ であり、日本の日銀とは位置づけが異なります) - Commerzbank ・・・ドイツ2番手のメガバンク
- Sparkasse ・・・ドイツ各都市が運営する貯蓄銀行
- Postbank ・・・ドイツ郵便局が運営する郵貯銀行
これらの歴史ある大手銀行は全てドイツ各地に多数の実店舗を構えています。店舗に行けば直接スタッフに対応してもらえる一方、基本的に口座開設のために店舗に出向く必要があります。運が良ければ親切に英語で対応してもらえますが、スタッフによっては面倒くさがられたりドイツ語中心の対応になるなど、言語の問題がどうしても付きまといます(デュッセルドルフであれば日本語で対応してもらえるところもあるかもです)。Webサイトなどもドイツ語オンリーの場合がほとんどです。
これら大手銀行の口座保有を資産形成の観点からおすすめしない最大の理由は、毎月『口座管理手数料』がかかることです。日本と違ってドイツでは、送金手数料やATM手数料が無料なかわりに銀行口座を保持するのに口座管理手数料をとられることが一般的です。しかも月€7程度(=約1,000円)とわりと高額です。学生の場合であったり、「月€○以上の(給与)振込がある」といった条件を達成すれば無料になるケースもあるようですが、まだドイツに転居したばかりで就職先がいつ決まるかわからなかった私にとっては、給与が入ってこないのに口座を持っているだけで毎月お金が引かれていくことはどうにかして避けたいと考えていました。
一方、これからおすすめする近年急拡大中のネット銀行は、基本的に口座管理手数料は無料です。むしろ毎月利息がもらえるくらいです(しかも円よりかなり高金利です)。大手銀行と比較して物理的な店舗を持たない、一定回数を超えるとATM手数料がかかるといったデメリットがある一方、どの銀行のATMも利用できる、口座開設がスマホアプリで完結する、英語版のWebサイトやスマホアプリが完備されている、というメリットもあります。
以下に、大手銀行とネット銀行の大まかな違いをまとめます。
- 大手で実績がある(安心感)
- 物理的な店舗があり、スタッフと対面で話せる
- ATM手数料がいつでも無料
- 基本的に口座管理手数料がかかる
- 普通預金利息が一切つかない
- 口座開設は店舗に出向く必要あり
- 英語対応が不十分な場合あり
- 基本的に口座管理手数料が無料
- 基本的に普通預金利息がもらえる
- 口座開設はオンラインで完結
- 十分な英語対応
- 歴史が相対的に浅い
- 物理的な店舗がなく、オンラインでのコミュニケーションのみ
- ATM手数料がかかる場合あり
なお、上記のまとめはあくまでも大まかな傾向であり、銀行や属性・条件によっては必ずしも当てはまらない場合がある点はご了承下さい。
各おすすめの銀行口座の詳細
次項以降では、私たちがおすすめする3つの銀行について、それぞれの特徴と違い、留意点などを解説していきます。
N26
N26はドイツ発祥のネット銀行で、EU加盟国を中心にサービスを展開しています。口座管理手数料が無料のスタンダードプランに加え、さまざまな特典がつく複数の有料プランが用意されています。2024年1月からドイツとオーストリアの顧客向けにETF(上場投資信託)の取り扱いが開始された点も注目です。
Wise、ソニー銀行と比較した場合のN26(スタンダードプラン)の強みと留意点は次の通りです。
- 在独ATMでの出金手数料が月3回まで無料
- スーパーのレジなどで出金手数料がいつでも無料【Cash26】
- 在独銀行への送金手数料が無料
- N26の口座を保有する、電話番号を交換している知人への即時送金が可能【Money Beam】
- 株式・ETFへの投資が可能
- ヨーロッパ在住者のみ口座開設可能(現地の住所が必須)
- 口座開設時にビデオ通話での本人確認があるためある程度の英語力が必須
- 日本円の保有・送金不可
- 普通預金利息をもらうために専用口座に移す必要あり
- キャッシュ&デビットカードの発行手数料€10がかかる
ドイツで給与をもらい、その一部を株式投資に充てたい人に特におすすめです
●N26公式サイト(英語表記):https://n26.com/en-eu
Wise
Wiseはイギリス発祥のネット銀行で、日本を含む世界各国でサービスを展開しています。特殊な国際送金スキームに強みがあり、一般的な銀行に比べて為替手数料も含めた国際送金手数料が格安であることが1番の人気の理由となっています。
N26、ソニー銀行と比較した場合のWiseの強みと留意点は次の通りです。
- 日本在住者・ヨーロッパ在住者ともに口座開設可能
- ビデオ通話での本人確認はなく口座開設が容易
- 日本語版のWebサイトが完備されている
- ユーロの普通預金金利が高い
<以下、ドイツの住所で開設した場合> - 在独ATMでの出金手数料が月2回まで無料(無料出金限度額は月€200)
- 在独銀行への送金手数料が無料
- 在日銀行への国際送金手数料が安い
- 原則として日本円の送金不可(日本円の送金が可能な口座番号を取得できた場合でもそれなりの送金手数料がかかる)
- 単体の為替手数料が高い
- キャッシュ&デビットカードの発行手数料€7(日本では¥1,200)がかかる
日本にいる家族あるいは海外留学中のお子さんに海外送金を頻繁にしたい方に特におすすめです
●Wise公式サイト(日本語表記):https://wise.com/jp/
ソニー銀行(非居住者向け)
ソニー銀行は名前の通り、日本のソニーグループ傘下のネット銀行です。ソニーグループはエレクトロニクス分野やエンタメ分野における成功にとどまらず、金融分野でも絶大な信頼を得ています。日本の他の銀行と比較して外貨預金に強みがあり、為替手数料の安さと取扱通貨数は業界トップレベルです。
N26、Wiseと比較した場合のソニー銀行の強みと留意点は次の通りです。
- 在日銀行ながら国外転居手続により口座保有が可能
- 完全な日本語対応
- 在日銀行への送金手数料が無料 or 最安
- 為替手数料が無料 or 最安
- ユーロの定期預金金利が高い
- 常時・随時の豊富なキャッシュバック・キャンペーンあり(他銀行から100万円相当分以上の外貨送金で5,000円キャッシュバック、日本国内のカード利用で0.5〜18%キャッシュバックなど)
- 日本在住者のみ口座開設可能
- 投資信託やFXは日本在住者のみ利用可能(ただし投資信託の保有継続が可能な場合あり)
- 在独ATMでの出金手数料がかかる
- ユーロの送金不可(ただし受取は可能)
日本に住んでいて海外出張や海外旅行に頻繁に行く方にも超絶おすすめです
●ソニー銀行公式サイト(日本語表記):https://moneykit.net
3つの銀行口座のおすすめの活用術
前章では、それぞれのネット銀行が他の銀行よりも資産形成において優れた点を持っている一方で、留意すべき欠点や制約も持ち合わせていることが理解できたかと思います。(スペースの都合で上では紹介しきれていない各銀行ならではの機能がまだまだたくさんありますが、その点はご容赦ください。)
本章では、おすすめしたい3つの銀行口座を実際に保有している私たちが、それぞれの強みや制約などに留意しつつどのように使い分けることで資産形成スピードを最大限に高めているかをご紹介します。
資産形成に関する評価項目に絞り、N26、Wise、ソニー銀行の強みと弱みを改めて整理した一覧表は次の通りです。◎、○、△の三段階で絶対評価した上で、各評価項目において最良と思われる銀行を赤字で記しています。横棒(-)はその機能がないことを示しています。
N26/Wise/ソニー銀行の機能比較
評価項目 | N26 | Wise | ソニー銀行 |
---|---|---|---|
出金(ユーロ) | ◎ | ○ | △ |
出金(円) | – | △ | ◎ |
国内送金(ユーロ) | ◎ | ◎ | – |
国内送金(円) | – | – or △* | ○ |
国際送金(ユーロ→ユーロ) | – | ◎ | – |
為替+国際送金(ユーロ→円) | ◎ | ◎ | – |
為替(ユーロ⇄円) | – | △ | ◎ |
普通預金金利(ユーロ) | ○ | ◎ | △ |
定期預金金利(ユーロ) | – | – | ◎ |
株式・ETFへの投資(ユーロ) | ◎ | – | – |
キャッシュバック・キャンペーン | △ | △ | ◎ |
上記の点を踏まえ、私たちが提案する3つの銀行口座のおすすめの活用術は次の通りです。
●口座開設は友人紹介キャンペーンを利用して特典を受け取る
友人紹介キャンペーンを利用することで口座開設者にそれぞれ下記の特典が付与されます(特典付与条件の詳細は各銀行名のリンク先をご確認ください)
※口座開設時に友人紹介キャンペーンを利用したい方はお問い合わせよりご連絡をいただければ私たちの保有口座から紹介リンクを送付することも可能です(ソニー銀行の紹介に関してはご本名をお伺いすることになる点はご了承ください)
●給与受取口座と口座振替口座を『N26』に設定する
[理由]N26はユーロでの出金、送金、株式・ETF投資において最も優れているため
[具体例]ドイツで稼いだ給与€2,000をN26で受け取り、口座振替の通勤定期券や通信費など€80をN26から引き落とされるように設定する
●現金出金を『N26』から行う
[理由]N26はATM手数料が3回まで無料かつスーパーのレジなどでの出金も可能なため
[具体例]1ヶ月に必要な現金€100をREWEのレジでN26から出金する
飲食店やトイレは現金対応のみの場合があるものの、ドイツでは基本的にキャッシュレス決済が浸透しているため、出金は月に€100程度を1〜2回で十分です
●家庭内の生活費送金を『N26』で行う
[理由]N26のMoney Beamという機能で無料で即時送金が可能なため
[具体例]生活費の自己負担分€800をN26のMoney Beamで夫に送金する
●株式・ETF投資を『N26』で行う
[理由]株式・ETF投資はN26でのみ可能なため
[具体例]N26で余裕資金€100分のETFを購入する
購入手数料€0.9が都度発生するため、定期少額積立購入に限らず、ある程度資金がまとまった段階での購入もおすすめです
●口座振替分のお金を『N26』に残して余ったお金を『Wise』に送り、買い物は『Wise』のデビットカードで決済する
[理由]Wiseは普通預金金利が年利2.29%と、N26の1.26%、ソニー銀行の0.3%と比較して最も高いため
[具体例]N26に通勤定期券や通信費などの口座振替分+αの€100を残して余った€900をWiseに送金し、ドラッグストアで日用品€25などを購入する際はWiseのデビットカードで支払う
Wiseのデビットカードをお財布携帯に設定しておくと大変便利です
●キャンペーン中に『Wise』のユーロを『ソニー銀行』に送金する
[理由]Wiseは国際送金手数料が最も安く、またソニー銀行の外貨送金キャンペーン中であればキャッシュバックが得られるため
[具体例]キャンペーン期間中にWiseに貯まった€6,000(100万円相当分以上)をソニー銀行に送金してキャッシュバック¥5,000を獲得する
- Wiseからソニー銀行へは送金手数料€3.84が都度発生するため、ある程度資金がまとまった時点での送金がおすすめです
- Wise内でユーロから円に替えると為替手数料が高く、またソニー銀行の外貨送金キャンペーンを利用できないため注意が必要です
- ソニー銀行からWiseなどへのユーロ送金はできず、またソニー銀行はユーロ出金に手数料がかかるため、ドイツで大金を送金あるいは出金する予定がある場合はソニー銀行への大量送金は避けた方がよいです(ソニー銀行のデビットカードでの買い物であればドイツでも日用使いが可能です)
●『ソニー銀行』のユーロの余裕資金を定期預金に入れる
[理由]ソニー銀行はユーロの普通預金は低いが定期預金は年利2.4%(1年定期)と高いため
[具体例]ソニー銀行内の1年間使う予定のない€5,000を1年定期預金に入れる
定期預金の預入時に€1,000×5本などに分けることで、仮に満期前にお金が必要になり中途解約する場合でも部分的な解約が可能です
●日本一時帰国時の買い物は『ソニー銀行』のデビットカードで決済する
[理由]ソニー銀行の為替手数料は最安、かつキャンペーン期間中であれば日本国内での買い物でキャッシュバックが得られるため
[具体例]ソニー銀行内で€1,000を¥165,000に両替し(¥165/€の場合)、キャンペーン期間中に日本でユニクロの服¥50,000をソニー銀行のデビットカードで購入し、キャッシュバック¥5,000を獲得する
円安のタイミングを見計らって自分でユーロを円に替えても良し、あるいは口座内の円が不足すればその時点の為替レートでユーロ口座から自動で両替えされるのでそれも良しです
なお、ここで登場する具体例中の金額は、私自身の実体験に即して皆さんの理解を深める目的で例として記載しているものであり、推奨ではありません。投資判断はあくまでも自己責任でお願いします。
また、登場する手数料や金利の水準、キャンペーンなどは、これまでに私自身が実際に支払ったり恩恵を受けたりしたものであり、今後も同じ水準や条件が続くとは限らないことをご了承ください。
[補足] Trade Republicについて
ドイツ発祥のネット証券会社『Trade Republic』は、株式・ETFの取引手数料が無料または非常に低いことに加え、証券口座にお金を入れておくだけで年利4%の利息がもらえることで有名です。
今回おすすめの口座として上でご紹介しなかったのは、残念ながら私たち自身が口座を開設・保有することができず、実体験をお伝えすることができなかったためです。現地の滞在許可証があれば英語対応のスマホアプリで口座開設が可能なはずなのですが、私たちのビザが国際機関職員用の特殊なビザのためか、何度試してもID認証のステップをクリアすることができませんでした。個別にメールで問い合わせてもみましたが、解決に向けた明確な回答はなく、現在も口座開設には至っていません。
ドイツ人の同僚によれば、通常であればオンラインで容易に口座開設が可能だが、特殊事例への対応が不十分な会社として知られているとのこと。
N26よりも低コストの株式・ETF投資やより高金利の利息収入を望む方はこちらの口座の保有も検討されることをおすすめします。
おわりに
Wiseとソニー銀行については日本在住の方でも開設可能なため、円預金の金利がいまだに低い現在(2024年5月時点)、外貨預金で少しでも利息収入を得たいという方にもおすすめです。また昨今為替変動が非常に激しいため、海外出張や海外旅行に行く計画がある方は、少しでも円高のタイミングに、あるいは定期積立で外貨を購入しておくことをおすすめします。
本記事の想定読者としている、”ドイツあるいはヨーロッパに転居する予定がある方” の中にも、”一時的にヨーロッパで生活する予定がある方” や、”一生涯ヨーロッパに居住することを想定している方”、”日本とヨーロッパを行ったり来たりしたい方” など状況は様々かと思います。メインの生活拠点次第で、将来的なユーロと円の必要度合いが変わってくるため、最適な通貨保有戦略も個々人で異なってくるものと考えます。
本記事でおすすめしている3つの銀行口座の活用術が必ずしも全員にとっての最適解とはならないものと理解していますが、本記事の内容が少しでも皆さんの今後の資産形成において参考になれば幸いです。
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