ドイツ・ケルン(Köln)在住の日本人夫婦が、2022年1月末の渡独時にドイツ・ケルンにて新居を探した際の記録です。
はじめに
2021年9月にドイツ・ボン(Bonn)の国際機関への転職が決まり、2022年1月末の勤務開始に合わせてドイツへ移住しました。ドイツでの新居は、将来的な妻の就職先も考慮し、多数の日本企業があるデュッセルドルフ(Düsseldorf)とボンの間のケルン周辺で探しました。
日本を離れる前に情報収集をしていたところ、日本からリモートで物件を探すことは難しいとわかり、最初の1ヶ月は職場近くの長期滞在可能なホテルで過ごすことにしました。
結論から話しますと、渡独してから1ヶ月ほどで賃貸契約を結ぶことができ、3月中旬ごろにはホテルを出て新しい家での生活を始めることができました。本記事ではその約1ヶ月半の間に行った家探しについて詳しく説明していきます。なお、この家探しは一足先に日本を発っていた夫の私が担当していたため、本記事も私(夫)によって作成されました。
なお、本記事で紹介している家探しプロセスは、すでにドイツでの職場が決まっており、ビザなどの滞在許可証が得られている方向けです。ドイツに来てから職を見つけ、就労ビザを得ようと考えている方の場合では大家からの審査などが厳しくなることも考えられ、下記で述べる内容が必ずしも当てはまるわけではないことをご理解ください。
家探しの全体の流れ
家探しを始めてから、実際に住み始めるまでの流れは以下のとおりです。基本的には日本と同じプロセスですが、借りたい人に対する大家のチェックがあるなどドイツならではのステップもあります。各ステップの詳細は下で解説します。
- Step 1ウェブサイトで物件検索
- Step 2気になる物件への問い合わせ
- Step 3内覧の日程調整
- Step 4書類の提出
- Step 5内覧・大家への連絡
- Step 6大家からの結果報告
- Step 7事務手続き・鍵受取
- Step 8住民登録・滞在許可申請
【Step 1】ウェブサイトで物件検索
街中に不動産屋も多く見ますが、ネットで物件を探す方が多いかなと思います。私が実際に使用したドイツの不動産サイトをご紹介します!
- ImmoScout24:少なくとも私の周りではこのサイトが1番メジャーでした。郵便番号を入力するとその地域の物件リストが表示されます(より細かい条件でフィルタをかけることも可能です)。私は最終的にこのサイトで現在の物件を見つけました。
- Immowelt:上記のImmoScout24に並ぶメジャーなサイトの1つかと思います。私もここに掲載されているいくつかの物件の内覧に参加しました。
- Apartbments-b2b:家具付き物件の専門サイトです。私は家具付きの物件に絞って探していたので重宝し、複数の物件の内覧に参加しました。内覧を担当してくれたスタッフも親切でしたが、当時はエレベーターなしの最上階の部屋など、決め手に欠ける物件が多かったです。
- Euro Estate:日本人が運営しているサイトで、物件数は少ないですが日本語でのやり取りが可能です。ネット上での評判があまり良くなかったので少々警戒して問い合わせをしたのですが、メール上でのやり取りは特に違和感ありませんでした。ただ、ここを仲介して物件を借りる場合には日本で言うところの礼金(紹介料金)が必要になります(ここ以外にドイツで礼金を求められたことはありません)。私のときはその物件に2年住む場合は1,000ユーロ、3年以上住むなら1,500ユーロとのことでした。結果的にこの礼金がネックとなりここの物件の内覧は行いませんでした。
ドイツの多くの家では家具はもちろん、キッチンすらない物件が多いです。同僚によると、ドイツ人男性のモテる基準は「DIYができるかどうか」とのことらしいです。キッチンも自分で作る文化がそのような評価基準を形成しているのかもしれませんね。もちろんキッチン付き物件もそれなりにはあります。ただ私が選んだような家具付き物件になると、ゼロというわけではないですが、数はグッと少なくなる印象です。
【Step 2】気になる物件への問い合わせ
ここが第一関門です。基本的にベルリン、ミュンヘン、デュッセルドルフ、ケルンなどの大きな都市では物件の競争率がとても高いです。1つの物件に何件も問い合わせがあることは当たり前のようです。面倒かもしれませんが、物件の担当者からの返信率を少しでも上げるために基本的にはドイツ語でやり取りをするように心がけましょう(Google翻訳のレベルで十分です)。
【Step 3】内覧の日程調整
大家から返事が届いたら内覧の日程調整に進みます。この時点で以下に記す書類の提出を求められるケースがあります。すぐに対応できるようにできるだけ事前に準備しておきましょう。
1番大事なことですが、内覧を行うまで(具体的には貸主の素性がわかるまで)は絶対にいかなる金銭も払わないでください!ドイツでは外国人(日本人に限りません)を狙った賃貸契約に伴う詐欺が横行しており、内覧をする前(大家に会う前)に「手数料が必要だから」など、何かと理由をつけてお金を請求する詐欺が横行しているようです。振り込んでしまうと音沙汰がなくなり、ネットに記載されている物件の住所に行ってみても何もない(少なくとも貸し出し中の物件はない)状態だそうです。実際に被害にあった同僚もおり、被害にあったとしてもネットでしかやり取りをしていない相手を捕まえることが難しく、泣き寝入りという結末になります。
【Step 4】書類の提出
提出を求められるタイミングは大家によって内覧前や内覧後だったりしますが、以下が私が現在の物件を借りるにあたり提出を求められた書類です。必ずこれらが求められるというわけではないと思いますが、私の場合は大家ではなく不動産会社が仲介で入っていたので特に変な書類はないかと思います。
- Tenant self-disclosure
- 給与明細 or 雇用契約書のコピー
- Schufa information(詳細は後述します)
- 滞在許可証(ビザ)のコピー
- パスポートのコピー
Tenant self-disclosureはテンプレートが不動産会社から送られてきたので、そのフォーマットに沿って作成しました。
給与明細について、当時私が調べたときの情報では家賃の3倍ほどの月給がないと断られることもあるようです。
ビザやパスポートのコピーを紙媒体で提出するよう求められ、身の回りにコピー機がない場合にはiPhoneでスキャン(PDF化)し、ドラッグストアのdmなどで印刷することができます。パスポートのコピーに関しては家探しに限らず必要になることが多いと思うので、スキャンの電子データと複数枚のコピーをあらかじめ用意しておくと良いかと思います。
【Step 5】内覧・大家への連絡
内覧に参加しましょう。ドイツでは一般的だと思うのですが、私が参加した内覧の半分近くはまだ前の住人が住んでいる状態で行われました。住人が家を案内してくれる場合もあれば、内覧の時間は外出してもらい、大家と家を見ることもありました。生活感が丸出しの家を見るので、日本の感覚でいるとその家に綺麗な印象は持ちにくいですね・・・また、私は遭遇しなかったのですが、複数の希望者がいる場合にはその希望者を全員集めて一気に内覧をするケースもあるそうです。そのような場合には大家にいかに気に入られるかが特に大事だと聞きました(簡単な日本のお土産を渡すなど?)。
大家次第ではありますが、基本的に内覧は平日日中に行われることが多い印象です。私の職場は平日に家探しに時間を割くことに理解がある環境であったため、平日の日中でも内覧のために職場を離れることができました。どうしても平日の日中に時間を作れない場合は、仕事終わりもしくは土日に内覧をお願いしてみましょう。また私の場合、家探しの時点で妻はまだ日本にいたため、時間が合えばテレビ電話などオンラインで内覧に参加していました。
内覧の結果その物件が気に入ったのであれば、できればその日中に大家へ物件を借りたい旨の連絡を入れましょう。
【Step 6】大家からの結果報告
見事あなたが選ばれた場合には数日後に大家から連絡が来ます。選ばれなかった場合には連絡がないこともあるようなので、2週間ほどしても音沙汰がなければダメだったと諦めましょう。
【Step 7】事務手続き・鍵受取
ここからは日本と同じような事務手続きです。追加で必要な書類が求められば提出し、契約書にサインをします。「ドイツだから」というものではないですが、契約書にはしっかりと目を通しましょう。基本ドイツ語で書かれていて面倒だとは思いますが、家賃には何が含まれているのか(共益費など)、最低何ヶ月住まなければならないか、退去する際には何ヶ月前に通知しなければならないかなど、重要なことが書いてあるので翻訳アプリを活用して細部まで読み込みましょう。
敷金(デポジット)を振込み、大家から鍵をもらいます。ここまでくればもう安心です。敷金は日本と同じく家賃2〜3ヶ月分が相場のようです。私の場合は3ヶ月分4,200ユーロを支払いました。私は鍵をもらう前に敷金を振り込んだのですが、ドイツ人の同僚によると「物件の住所がわかっていて、大家とも会っている状態であればお金を振り込んでも大丈夫だよ」とのことでした。
おそらく大家側から話してくれるとは思いますが、家具付きの家に住む場合には入居前にどのような物があるか、またその状態を大家と一緒に確認をし、その結果を書類で残しておくことが大切です。私はまだ最初の家から引っ越しをしていないので退去時にどのようなチェックがあるかはわかりませんが、契約時に不動産会社から「2週間後に家具の確認を一緒に行うので、それまでに何が壊れているか把握しておいてね」と言われ、不動産会社立会のもと、物件に備わっている家具の状態についての記録を行いました。
【Step 8】住民登録・滞在許可申請
家探しの後の作業になりますが、生活が落ち着いたら住んでいる地区の住民登録局で住民登録(Wohnsitzanmeldung)を行いましょう。いろいろと調べると「入国後14日以内に行うこと」という文言を見ますが、14日以内に家を見つけることはほぼ不可能なので気にしなくてよいと思います。私は1月末に入国して、3月下旬ごろに住民登録を行いました。
住民登録後、次は外国人局にて滞在許可申請(Aufenthaltserlaubnis)を行います。私はこの滞在許可申請が必要なことを認識していなかったので完全にすっぽかしてしまっていました。住民登録をしてから2年後に外国人局から「滞在許可申請をしてください」という手紙が届いたので、その案内に沿って申請しました(特に罰則などはありませんでした)。
[補足]Schufaについて
提出を求められる書類の中にドイツ特有の書類 ‘Schufa’ があります。Euro-Japan netによると、ドイツの銀行口座を所有している人には個人の信用情報に関してスコアが付けられており、その情報がSchufaに集められているようです。当時私が調べていたときには多くのサイトで「家を借りる際にはSchufaが必要」と書かれていました。調べてみたところドイツの郵便局(Postbank)で入手できるとのことでしたので、仕事終わりにPostbankに向かいました。その時のやり取りを共有します!
家を借りたいのでSchufaを取得したいのですが。
それでは現在の住所を教えてください。
ドイツに来たばかりなのでホテル暮らしなのですが、ホテルの住所で大丈夫ですか?
そこに住民登録をしていますか?
家が見つかり次第引っ越す予定なので住民登録はしていません。
残念ですが、それではSchufaを出すことができません。住民登録をしてある住所が必要です。
家を借りるためにSchufaが必要なのですが、そのSchufaを得るためには何かしら家を借りて住民登録をしないとダメということでしょうか?自分のような場合にはどのようにしたらよいですか?
はい、Schufaは家を借りるために必要ですが、Schufaの請求には家が必要です。どのようにしたらよいかはちょっとわかりません(笑)。
結論として、ドイツに来たばかりで住民登録をした住所を持たない時点ではSchufaの入手は不可能のようです。幸い私の場合は不動産会社に事情を説明したところ「それなら提出しなくて大丈夫!」と言われたので、特に問題になりませんでした。このように大家によってはSchufaを出さなくても問題ないケースがあるようなので、提出書類一覧にSchufaと書かれていても相談してみると良いかと思います。
おわりに
事前に同僚や先輩に「家は中々見つからない」と脅されていたものの、私の場合は問い合わせメールへの返信率も比較的高く、内覧も5-6件行えました。ただ数ヶ月かけて家探しをしていた同僚もいたので、スムーズに行くかどうかは本当に運次第かなと思います。
これは私が家探し時に同僚に言われたことですが、早く見つけたいという気持ちを抑えて、自身が満足する物件を探し当てることが大切かと思います。実際に私も、今の物件を見つける前に契約直前まで進んだ物件がありました。物件自体は悪くはなかったのですが、バスタブがないなど、いくつか妥協しなければならない点があり迷っていました。当時はとにかく早く家探しを終わらせたかったために不満な点には目をつむり契約する方向でいたところ、同僚から上記のアドバイスをもらい、最終的にその物件は断ることにしました。結果論ではありますが、最終的に現在の全く不満のないバスタブ付きの物件を見つけることができ、アドバイスに従っていて本当によかったと感じています。知り合いには家をすぐに決めたものの、気に入らない点があり数ヶ月で引っ越ししてしまった人もいます。中々大家から返事がもらえないなどの状況で、内覧まで進んだ物件に「もうここでいいや」という気持ちで決めてしまいたくなるかもしれませんが、家の快適さはとても大事だと思います。できるだけ妥協せずに辛抱強く家探しをしたほうが良いかもしれません(もちろん個々人の置かれている状況により異なります)。
今回の記事がドイツに来られた方の家探しの参考になれば幸いです。
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